中央教育審議会、大学院博士課程の改革を提言。「徒弟制度」や、修士論文の廃止などを求める 98
ストーリー by hylom
どっちつかずになって終わるような…… 部門より
どっちつかずになって終わるような…… 部門より
あるAnonymous Coward 曰く、
文部科学省の中央教育審議会が、大学院博士課程の制度転換を提言しているそうだ。現在では博士課程の院生は研究室に属して1人の指導教官から指導を受けるが、これを「複数の研究室で指導を受けながら学位を取得する」という方針に転換するように求めているという。また、修士課程に相当する博士課程前期については修士論文を原則的に廃止、代わりに幅広い分野についてテストやリポート審査を行う「クォリファイング・イグザム」の導入を求めたそうだ。
雑感 (スコア:5, すばらしい洞察)
以下、雑感
1. 徒弟制度廃止
昔は、徒弟制度というか奴隷制度に近いことをやっており、途中で研究室を変ると、その後のキャリアパスを潰されるということもあったかも知れません。でも今時こんなことやったら、アカハラで訴えられますよ。少なくとも自分の周りにそのような人はいない。このご時世に徒弟制度なんて言葉を使うあたり、何となく悪意と言うか誘導的な意図を感じてしまいます。
2. 修士論文廃止
博士に進む前、社会に出る前に、英語、実験、論文、プレゼンの仕方etc.を、「修士研究を通じて」学生に叩き込むのは重要で、そのためには一つのテーマをキッチリやらせ、修士の期間内に完成させるのが一番手っ取り早いと思う。さらに、「ちゃんとした」修士論文を書くには、広い分野の知識がバックグラウンドとして絶対に必要。修論廃止して幅広い分野をなんて、ジェネラリストという名の何もできない奴を量産するだけ。一つのことに没頭して、完遂させる事も、若いうちには重要。
3. クォリファイング・イグザム
2.の理由とあわせると、学部生に相手に実施するので十分。あと、安易に横文字を使うのは、馬鹿か詐欺師と個人的には思っています。
4. 複数の研究室で指導を受ける
これはおおむね同意するが、だから修論廃止っておかしくねぇ?博士に進む奴は、学部から修士または修士から博士進学の時には必ず所属を変える、もしくは途中1年程度の留学を必須とするだけで十分だと思うけど。
5. 誰がこんなこと言い出したのか?
いかにも現場を知らなそうな人間の意見だな〜って言うのが感想。誰が言い出したのか、すなわち責任者は誰なのかが知りたい。ざっくり検索してみたけど、誰が主な提案者・責任者なのか良く分からなかった。思いつきで提案して、その責任は取らない気?
Re:雑感 (スコア:5, 参考になる)
まず、タレコミ文にある「徒弟制度」という言葉は答申には一言も出てきていません。タレコミACもしくは編集者の主観でしょう。
答申では、「実際の教育が狭い範囲の専門分野の研究に陥りがち」「大学と産業界等との間において,大学院が養成する人
材像と産業界等の評価や期待に関する認識の共有が十分でない」といった指摘があります。教員と学生の上下・主従関係の問題ではなく、修了者の品質保証が明確でないためにキャリアパスが限定されてしまうことを問題視しているように読めます。
修論の廃止についても別に無条件に修論廃止を唱えているわけではなく、博士課程5ヵ年をトータルで考えたときに「修士論文の作成に係る負担が過度となっている」面もあるので、「博士課程(前期)の修了時に,修士論文の作成に代えて上記のような審査を行う仕組みの導入を進めることが必要」という書き方です。特に途中に「博士課程(前期)修了後に就職する者等の取扱いに留意しつつ」という但書きがあり、修士取ってすぐ就職する学生は修論を義務付ける余地も残しているのでしょう。
Re:雑感 (スコア:3, 興味深い)
申し訳ありません、ざっくりは見ましたが、
問題点の指摘だけで、結局どのような対策をとるのか私には読み取れず、
さらに資料を熟読する時間が無かったので
投稿時点ではタレコミ文を信用して、タイトルを雑感としました
なお、徒弟制度と記載しているのは、タレコミ人でも編集者でもなく
恐らくマスコミ?の方達です
例えば
http://d.hatena.ne.jp/scicom/
や、朝のYahooでもトップに出ており
徒弟制度と記載されておりました
文科省が言っている意見が
>答申では〜中略〜残しているでしょう
に記載された通りの内容で「だけ」であれば、
マスコミが勝手な解釈し、それを受けてタレコミ文の様になったのでしょう
詳細については調べていないので、私の勝手な妄想ですが、、、、
ちゃんと原文を読み、
センセーショナルな文面に踊らされるな との
毎度の教訓を得ました
ありがとうございます
Re:雑感 (スコア:2, 興味深い)
>答申では、「実際の教育が狭い範囲の専門分野の研究に陥りがち」「大学と産業界等との間において,大学院が養成する人
材像と産業界等の評価や期待に関する認識の共有が十分でない」といった指摘があります。
そもそも、産業界は大学の専門課程を修了した学生を欲しているのだろうかという素朴な疑問が。それに無理に大学を合わせるのもおかしな話のような気がします。大学院は会社員養成機関じゃない…と思うのですが、そういう風に変わろうとしてるという話でしょうかね。
>修了者の品質保証が明確でないためにキャリアパスが限定されてしまうことを問題視しているように読めます。
修了者の品質保証が明確でないのは、どう考えても修了に値しない学生を卒業させてしまうからのような気が。最近はそうでもない?
>修士取ってすぐ就職する学生は修論を義務付ける余地も残しているのでしょう。
大体、修士や博士課程卒業者は企業で技術者になるんだろうけど、技術者って上や現場に課題や解決策をわかりやすく説明するのが主な仕事になるので、論理立てて説明する訓練は積むに越したことはないと思うのですがねぇ。
多くの企業が技術者に論理立った思考回路を求めてない、とかいう話だと哀しいっすな。徹夜耐性とかそっちの方が重要?
Re:雑感 (スコア:2, 興味深い)
>産業界は、人材像のミスマッチを採用しない言訳にしてるだけで、どっちにしても博士を採用するつもりなんて毛頭無いのでは?とおもったりする。
日本の産業界で外国人の学位取得者を採用しているケースはしばしば見られます。
また、日本の産業界が博士に冷たいのが理由であるならば、日本のポスドクはもっと海外に職場を求めることもできるはずですが、それはあまり多くないように思います。私としても中教審答申の指摘には一理あり、日本の博士課程が専門分野に偏重しすぎていて、応用力・説明力・語学力・人脈を作る力といった「国際社会で活躍するためのジェネラリスト的素養」の面で諸外国の学位取得者に負けていることが原因ではないかという気がしています。英語論文書いて国際会議で発表することと、国際標準WGで相手を納得させることって、かなりベクトルが違いますよね?
もちろん日本にも国際社会で通用する素養を持った学位取得者はいますが、それは今のところその人の資質によるところが大きく、大学院教育システムの賜物とは言い難いのが現状です。知識集約型経済へと舵を切る上では、こうした高い専門性と高いジェネラリスト的素養を兼ね備えた人材をよりシステマティックに育成していく体制を整える必要がある、ということです。この方向性自体は今回の答申で初出というわけではなく、2005年にはすでに中教審答申として示されています(大学院に求められる人材養成機能 [mext.go.jp])。
Re:雑感 (スコア:1)
案外、(特定の偏った)現場をよく知ってる、つまり、徒弟制度の悪い面が極端に出た講座の出身者だったりして。 いや、先生が受けてきた非常勤の仕事とか翻訳の仕事を院生にやらせるとか、とある人に愚痴を聞いてびっくり。僕がこれまで所属したことがある研究科ではあり得ないですが・・・
Re:雑感 (スコア:1)
自分もその可能性は考えました
しかし、30年近い昔の恨みを今でも引きずって
(昔よりは奴隷制度が改善されつつある)現状を理解できていない方の意見では?
と妄想した次第です
だから、誰が言い出したのか気になりました
>先生が受けてきた非常勤の仕事とか翻訳の仕事を院生にやらせるとか、
これも程度問題だと思うのですよ
雑用も(内容によっては)仕事の内ですし
上記の翻訳なんて、院生にとって良い経験になるのでは?
それこそ、修論以外の広い知識(と経験)を得るチャンスになり、
今回の文科省(中教審?)の提言に沿うかも知れません
無駄な雑用と取るか、教育と解釈するかは、仕事の依頼者と受けての関係等に依存するので
一般化するのは難いのですが、、、
これらを考えて
修論廃止;バカじゃねぇ?
研究室移動;基本的には賛成
との立場を取りました
ご自身が書かれている#1896749は、多いに賛成です
叩くべきは、一部の(と思われる)バカな教員です
答申を読むと印象が違う (スコア:4, 参考になる)
この答申 [mext.go.jp],自分としては賛成。基本的には「大学院教育にもキャリアプランを取り入れろ」ということだし,現状を考えば無理もないかと。
国際的に見て,人口比では博士号取得者が少ない(ので,博士課程を減らすという選択肢はあり得ない)
→でも就職先がないのは困ったものだ
→産業界にも協力して貰って,キャリアプランが考えられる博士課程にしていこう!
ということと理解。修士論文についても単純に廃止とはどこにも書いてないし,博士(後期)課程に進むことを前提とするなら,資格試験で代替しても良し,という趣旨です(答申P.14)。講座の壁を取っ払うには制度的に手当てしないとダメ,という事情もあるような。
# この延長上で,「博士号取得者の就職率」が大学院補助金の額に影響してくる,なんてことになるのかなぁ?
研究大学院と専門大学院 (スコア:4, 興味深い)
今の大学院教育は将来学者となる人材を育成することを目標とした教育が行われており、修士・博士で民間に就職する人はそのコースに乗る能力がなかった人、と位置づけられているように思えます。
東大の岩本康志氏がだいぶ前に「社会科学における研究大学院と専門大学院」
http://www.iwamoto.e.u-tokyo.ac.jp/Courses/ProfessionalSchool.html [u-tokyo.ac.jp]
なるエッセイを書かれていますが、学問の発展のために研究を行う人材を育成する大学院と、社会の実益に貢献するために研究を行う人材を育成する大学院はそれぞれ別の目的を有した別の組織として取り扱うのが妥当であるように自分も思います。
なお、自分は博士に進学する資金の当てがなかったため修士で就職してお金を稼いでから留学しようと思っていたために、専門大学院に相当するコースに進んだのですが、指導教官の薦めで学術振興会特別研究員に応募したところ、運良く採択されたため、今こうして学者をしています。
研究大学院と専門大学院の間の壁が大きくなるとこのようなパスを辿る事が難しくなるため、大学院進学前の振り分けがより重要になるはずです。
中教の答申は適正に応じた振り分けという視点を軽視し、ひとまずより上の課程に大勢を突っ込んでから何とかできるようにしようという方針に見え、適正や希望に応じた指導のあり方を真摯に考えているようには思えません。
現在の日本の経済学系大学院では将来の学者としての適正は、修士論文が学術誌に採択される水準で書けるか否かでかなり見分けることができます。
逆に言うと、多くの経済学教員には将来の学者としての能力を十分に見抜く能力が無く、外部の第三者の評価を通じてようやく判別ができるという事です。
十分な見識がない者が作成したQualifying Examなど妥当性を持つわけが無く、国際的な学術研究との乖離がますます大きくなるだけです。
既に日本の大学が十分世界の一流と呼べる水準に達している分野であればそのような制度も意味を持つでしょうが、そうではない分野には百害あって一利なしでしょう。
寝言ですけど (スコア:2, すばらしい洞察)
>代わりに幅広い分野についてテストやリポート審査
専攻に分科された大学院生に対して、「ゼネラリストたれ」ということ?その要求じたいどうなの、ってのあるけど、
そもそも大学教育・大学院教育に社会として何を求めているのか、見失っているにも程がある。
ゼネラリストの養成が(院卒の)若くて24歳ってのは遅すぎるでしょう。
ゼネラリストの候補はむしろ高卒で海外で遊んでいるほうが有望w
大体、スペシャリストになるドクターコースの学生なんてそんなに人数要らない。
マスターコースの学生も、ドクターに進む+アルファ程度で十分。
なのに、多くの学生が大学院に進むのは学生らの学費の意味で無駄になっているし、
若い学生を就労させていないという意味で社会の損失だ。
何で日本はこんな社会になったのだろう?
Re:寝言ですけど (スコア:1, すばらしい洞察)
1)会社が「学部の若いのよこせ」と言いながら学士卒を蹴る
2)みんな修士に行きたがる
3)学士卒は院試落ちとみなされる
4)1に戻る
工学部の話な。
Re:寝言ですけど (スコア:2, 興味深い)
例えて言うならば「若い女が好き」「でも,ちゃんと大人の色気は欲しい」「でも,処女じゃないとダメ」というような条件から修士卒の新卒のみが採用になっているのが現状だよね.昔は「四大卒」だった「大人の色気」の水準が最近は「修士卒」に変わったけど,「博士卒」は「あんなババァ,誰が相手にするかよ」という価値観のようで.
個人的な感覚で言えば「若い人材が欲しい」というのはまだ理解できる面もあるけど,日本企業の「新卒」という処女性に対する拘りは異常だと思う.
#ちなみに俺は日本の凋落の最大の原因は日本企業の人事制度(つまり人事部門)にあると思っていて,バブル崩壊して20年も経つってのに,いまだにバブル期の延長みたいな採用方法を踏襲することしかできない日本企業(の人事)の無能さにはホトホト呆れている.なぜ外資では普通に行われている通年採用ができないのかねぇ?
Re:寝言ですけど (スコア:1)
>例えて言うならば「若い女が好き」「でも,ちゃんと大人の色気は欲しい」「でも,処女じゃないとダメ」というような条件から修士卒の新卒のみが採用になっているのが現状だよね.
実は採用の問題じゃなく、解雇の問題とかいうことはないですかね。首切りをしないのが良い企業という国民の謎の幻想を何とかしないと、企業もイメージダウンに繋がるような大量解雇は大っぴらにはできないでしょうし、そうすると5年先10年先に業態が大きく変わってもついていける人、色んな分野に使い潰しの効く人(伸び代がある、世界各地どこでも異動させられる)しか取らなくなるのは仕方ないような。
Re:寝言ですけど (スコア:2)
>解雇の問題とかいうことはないですかね。首切りをしないのが良い企業という国民の謎の幻想
いやそんな幻想を持ってるのは「国民」ではなく、一部の大企業の中高年、さらに具体的
には40代後半以上のバブル期以前入社組の正社員くらいでしょう。
マスゴミのキー局中高年正社員なんかもこっちのグループに入るのが困りもの。
それ以降に入社した世代は、自分より上に無能な人たちが首切りもされずに
のさばっているのを見てきたので、そんな幻想を持ちようがありません。
Re:寝言ですけど (スコア:1)
日本人社員を解雇して海外に出る。
日本人以外にはチャンスだが、日本の負け組は微かな希望も消滅だね。
the.ACount
Re:寝言ですけど (スコア:1)
>「処女性」に関しては、昔は「癖のついてない人材を雇って会社が教育する」という建前があったのに、最近は「即戦力を求む」とか言ってるんだから、筋が通らない。
10年前、いや5年前のやり方は通用しないってのが現状です。昔と今は違う、ということで筋は通ってますよ。
>ジェネラリストというかコーディネータ的な人はそれなりに必要だけど、専門バカもやはり必要じゃないかな、どうなのかな。
専門バカは必要と思いますが、中途半端な専門バカは居場所がないです。会社のコア技術に関わる分野において世界でトップクラスくらいの実力がないと厳しいかと。
Re:寝言ですけど (スコア:2)
大学全入時代(つうのも古いが)に入る前の話なら、それは企業に責任があるで済んだことなのですが……
みんなもう流石に気がついてると思うけど、学士卒でまともな学生が採れませんよね。
いや、居るのは知ってる。単に割合の問題で。
日本のメーカーが修士卒を採りたがるのは、修論を出す課程でそれなりに仕込まれるからです。
ま、それは余録なんですが。
いま、学部生に対して、世界の知識を広げるためにドクターになれって自信を持って薦められます?
どう考えても現状就職できない。じゃあ、キャリアパスとしてポスドクはありうるか?
ごく正直なところ、ドクター持ってたからっつってソレが何かのシグナルになっていません。
留学云々の話になるのは、実は恥ずべき事です。
# 日本国内じゃ質を担保できないから、英語使ってそれなりに研究できるヤツを選別するには留学させるしかないという。
その意味で、大学院の場所に寄らず質を確保しよう、
博士課程を乗り越えた人たちに就職先を見つけてあげようというのは間違っていません。
学問分野ごとに改善していこうって言うのも。
そうしなければ実家が資産家だとか就職したくないからだとか、そういう人ばっかりドクターに集まってしまう。
キャリアパスが描けていないのに(もう間違いなく就職できないのに)ドクターを人には勧められない。
そんな現状のままじゃいかんという危機意識は、合ってると思うんだけどなあ。
# やり方がどうのって議論は必要だけど、鼻で笑って良い話ではないよね:-(
Re:寝言ですけど (スコア:1, すばらしい洞察)
ちょっと前は
1)会社が「若いのよこせ」と言いながら高卒を蹴る
2)みんな大学に行きたがる
3)高卒は大学入試落ちとみなされる
4)1に戻る
その前は
1)会社が「若いのよこせ」と言いながら中卒を蹴る
2)みんな高校に行きたがる
3)中卒は高校入試落ちとみなされる
4)1に戻る
まさに誰得の負のスパイラル
Re:寝言ですけど (スコア:1, 興味深い)
> 専攻に分科された大学院生に対して、「ゼネラリストたれ」ということ?
ゼネラリストと言っても「ある学科の修士卒ならこの程度は共通に知っておいてほしいこと」くらいの「ゼネラル」だと勝手に解釈したけどもどうでしょうか?
そう解釈したら
> 大学教育・大学院教育に社会として何を求めているのか
というのもわかるのですが。
私自身十数年前に電気工学修士を取得しましたが、今から見て社会が修士に欲しているのは修論でやった専門分野より電気の全般にわたる知識が学卒よりも深い点だなと思っています。
誰もが大学院に行くことが無駄というのはわかりますが、自分の経験上メーカーで研究開発部門の仕事をやるとなったら学卒は厳しい点だろうというが多々あって、修士の期間が無駄になるとは思えません。
博士(工学)保有者です (スコア:2)
自然科学系は、paper出せば学位は取れます。人文系は徒弟制度そのもので、最悪といっていい状況です。
Re:博士(工学)保有者です (スコア:5, 興味深い)
自分は京都大学経済学研究科で博士号を取得したので、京大や経済学系のウエイトが多くなりますが、法律、政治、歴史、工学、医学などの分野の友人・知人から話を聞く限りそのような認識は相当な思い込みによるものだと思います。
人文系とひとくくりにされている経済、文学、法学ではそれぞれ博士号の位置づけが全く異なります。
まず経済学系における課程博士号の位置づけは、大学のテニュアを得るための前提となっています。
大学によっては博士号取得をしていなくてもテニュアとして採用する場合もありますが、最近では希です。
JREC-INの公募情報を見ればその殆どが博士号の保有を前提とした公募となっている事がわかります。
博士号の取得条件は大学や教員の方針によっても異なりますが、例えば私が博士号を取得した京都大学経済学研究科では博士論文には少なくとも1本の査読付き学術誌に採択された研究を含めるよう基準を設けています。
また、厳しめの指導教官の場合、中堅以上の国際誌に数本が採択されるまで博士号は与えないとしている人もいます。
東大の知り合いと話していると、東大も概ね似たような状況のようです。
経済学の本場であるアメリカの場合はコロンビアやプリンストンのような一流大学でも一流紙に採択されうる水準の論文を書いていれば博士号(Ph.D)が与えられる事もあるようです。
これは経済学の一流紙では査読期間が数年に渡ることもある事とも関連しているようです。
自分の知る限りでは、そうして博士号を得た方のJob market paperは博士号取得後数年以内に一流紙に掲載される事が殆どです。
もちろん中には査読付きとは言うものの、内輪で査読をしているような雑誌の掲載によって博士号を取る人も居ます。
しかし、それは工学系分野でも泡沫研究者にはよくあることではないかと思います。
もし、毎年大量の課程博士号取得者を輩出している医学分野や工学分野において、全ての方が厳しい水準の審査の下で学位を取得しているのであれば、堂々と現状を説明し、我々には現行制度である旨主張すればよいでしょう。
法学分野に関しては、今でも一流研究者は博士号を取りません。
その代わりに研究書を一冊出版することが多いようです。
旧帝大の准教授になった知り合いは博士号を取ると学者としての格が落ちる、等と本気で考えていたりします。
一流になれないが、指導教員が大学教員として就職させてあげようという意図を持った場合には指導教官が博士号を授与し、ポストの面倒を見る、もしくは公募ポストへの門戸を開いてあげるようです。
歴史・思想分野に関しては経済学と似たような状況のようです。
ただ、Impact factorのような第三者による学術誌のランク付けがなされていないので、部外者からでは状況を把握しにくい状態にあり、不明瞭と言われても仕方がない状態にあると思います。
あえて言わせて頂くと、工学・医学等における実験系の分野では単純肉体労働の成果によって共著者になり、全くの知的貢献無しにpaperを出して博士号を取得している方がいるのではないでしょうか。
そこそこのランクと評されている学術論文誌に名前が掲載されている方のうち、その後独立研究者として研究を続けている方の割合でみると、工学系のpaperを出すという事の位置づけは、経済学系のpaperを出すと言うことの位置づけよりはるかに軽いように見えます。
Re:博士(工学)保有者です (スコア:1)
自分の信じる学問が有益であると信じるのは経済学に関しても同様です。
工学系論文に役立つものも役立たないものもあるように、経済学の論文にも役立つもの、役立たないものがあります。
OR系は工学と経済学の線引きが曖昧な分野であり、有益な研究が行われている事もあります。
代表的な所ではオークション理論が有益な理論研究でしょうか。
実証研究となればデータ公開の動きが広がってきたことから、研究の妥当性を他の研究者が事後的に検証して論争が行われる事が増えてきています。
「ヤバイ経済学」「その数学が戦略を決める」等は役立つ実証研究(とデータ公開に伴う論争)の良い紹介になっています。
おそらく人文思想歴史など役に立たない学問の代表のように思われている分野でも、研究者の中には自分の研究が役に立つと信じているから人生を捧げている人もいるでしょう。
自分には価値がわからないからといって、その学問に価値が無いと見なすのは見識不足といわざるを得ません。
Re:博士(工学)保有者です (スコア:1)
「研究対象の具体性がある分だけ審査基準も適度なレベルで設定できる」ようなテーマに関しては経済学も追試されて論争が行われています。
米国にはNLSYのような公表された長期にわたる追跡可能なデータが存在しており、教育やトレーニングが賃金に与える影響についてこれを用いて長年にわたる論争が行われてきました。
http://www.bls.gov/nls/ [bls.gov]
また、米国では様々な政策において、科学に基づく効果を検証することが求められるようになっており、政策の効果に関する公開されたデータを用いて検証が行われるようになっています。
日本ではPDCAサイクルなどと称していますが、政策に対して科学的な検証が成されている事は殆ど無く、またそれを行えるようにしようという兆しもありません。
日本でも政策の善し悪しを主観や思い込みで判断したり、政争によって政策が決められる状態から脱却し、客観的に議論できるような土台を作って行くのも経済学者に課された役割ですね。
Re:博士(工学)保有者です (スコア:1)
学位取得と、現実にその業績が用いられる事との間には著しい隔たりがあるのは当たり前では?
一流企業の経営者が経営学の学位を一切保有していない、政治家が政治学を学んだこともない、経済評論家・経済政策担当者が経済学を全く知らない、等は当たり前です。
音楽・美術・スポーツにも学位ありますけど、実務家として広く知られていて、かつ博士号を保有している人って相当希なような気がします。
Re:博士(工学)保有者です (スコア:1)
自分も小澤征爾やカルロス・クライバー等は大学の博士号を有していてもおかしくないかなと思って軽く調べてみたのですが、博士号取得者である旨記載されている資料が見当たりませんでした。
有名どころで学位取得をしている指揮者となると、例えばどなたになるでしょう?
自分は演奏家は余り知らないのですが、演奏家についても有名どころは博士号取得者なのでしょうか?
自分の知っている範囲では、ソリストの一流どころは音大は出ているようですが、修士課程や博士課程を出て学位を取得しているとプロフィールが記載されている方はいませんでした。
なお、名誉博士号は課程博士や論文博士とは別物と認識しており、博士号取得に含めていません。
修士の講義を増やすのは賛成 (スコア:2, 興味深い)
Re:修士の講義を増やすのは賛成 (スコア:1, すばらしい洞察)
Re:修士の講義を増やすのは賛成 (スコア:1)
責任転嫁 (スコア:2, 興味深い)
解決済みの項目を広く浅く学んでも、未発見/未解決項目の発掘・解決にはつながらない。。という意味で平均値
は上げても独創的な研究につながるかは疑問。一分野を深堀しつつ、他の研究分野からの目線を入れられるように
するなら、まだ有効かもしれない。
あと、個人的には文科省の意向をくんだ?責任転嫁的な話の気がします。
国的にももっと人材育成しなきゃだわ->文科省ポスドク一万人計画実施!->大学にも企業にも受け皿無く破綻->
大学の教育/研究システムに問題があるんじゃね?-> 企業の求める一定の知識/トレーニング入れたらよくね?
的な。中教審のメンバー表を斜め読みした限り産業界メンバーは皆無なので、大学目線の人材育成目標を設定して
結局破綻する予感がする。
徒弟制度は有効な訓練形態 (スコア:1)
もちろん、複数の先生に同時並行的に師事するというやり方もひとつの有効な手段ではあると思うのでそれを追加導入するのには賛成。
「複数の研究室で指導」? (スコア:1)
誰が教育の責任を取るんでしょうね。
博士課程といえども、指導教官の密接な関与無しにある水準をクリアできるのはよほどよくできた学生だけですよ。
今だって指導教官が良かれと思えばよその研究室の世話になる事もできるのだから、教官がまっとうで効果があるケースではとっくに実施しているでしょう。
それを全員に広げるのは、根性なし教官に教育をサボる大義名分を与えるだけな気がします。
だいたい、教官を見定めて入ってきた熱心な学生さんに失礼ってもんです。
博士課程における「徒弟制度」や、修士論文の功罪ってなに? (スコア:0)
高卒の私に教えてください。
Re:博士課程における「徒弟制度」や、修士論文の功罪ってなに? (スコア:1)
K大でありがちな徒弟制度
院生の私「先生、学位がないとアカポスにつけません、学位を出してください!」
死導教官「とりあえず私の言うとおりやっていなさい、そうすれば悪いようにはならない」
留年先輩「そうだ!オレの論文が受理されて博士を採ってからだ。順番を飛ばすな!」
ボス教授「そのとおり!院生クン、君は学問を理解していないね。君に学位は出せないよ」
院生の私「じゃあT大の○○先生に学位もらいます」
ボス教授「無理だよ。私が話を潰す」
kubochan
イイ・マズー混在だな (スコア:0)
>「複数の研究室で指導を受けながら学位を取得する」
これはイイ。
>修士課程に相当する博士課程前期については修士論文を原則的に廃止
バカじゃね?
Re: (スコア:0)
>修士課程に相当する博士課程前期については修士論文を原則的に廃止
そのかわり学会発表必須.とかならいいと思う.
Re:イイ・マズー混在だな (スコア:3, 参考になる)
十数年前に「学会は学内の卒論発表とは違うので、質疑応答に耐えられるものを」と、
座長が発表者(と言うか、聴衆の中の指導教員か)へ苦言を言っているのを見たことがあるので。
また、現状でも内規上は学会発表必須になっている学校もあるのではないかと思ったりもしますが。
fj.jokes出身:
Re:イイ・マズー混在だな (スコア:1)
わからないではないですが,
次の世代を担う学生を育てることは重要だと思います。
IEEEなんかも学生を伸ばすことには力を入れています。
まあ,投資と考えているのかもしれませんが。
Re:イイ・マズー混在だな (スコア:1, 参考になる)
学会の名はついてるけど聴講者は発表者のみという,やる意味が全く見いだせない学会も存在します.
# 修士の中の人なのでAC
Re:イイ・マズー混在だな (スコア:1, すばらしい洞察)
それすら通らないのを排除できるからね。
Re:イイ・マズー混在だな (スコア:1, 参考になる)
そのあたりの評価は,分野によって大きく違います.
トップカンファレンス限定ですが,学会発表が論文誌への掲載と同格とみなされる分野も多いです.
コンピュータサイエンス系では,分野が若いためか,学会発表の価値が高いですね.
Re:イイ・マズー混在だな (スコア:1)
という発想をやめて修士では勉強をしましょうということじゃないかな。
> ゆとりの幻想
受験競争が軟化して学部の教育のレベルが下がってきて...とかいう
「ゆとりの現実」かも。
中央教育審議会の長が (スコア:0)
大学院を中退して、退職直前にようやく学位がとったような輩だからね。
よっぽど嫌いなんだろう名ぁ。
Re:中央教育審議会の長が (スコア:2, 興味深い)
-- 哀れな日本人専用(sorry Japanese only) --
寝言は寝て言え (スコア:0)
Re:寝言は寝て言え (スコア:1)
Re: (スコア:0)
アメリカかあ。
ファンドは確かに多い。ファンドを取ってこれないところは日本以上に悲惨だけどね。
Re:寝言は寝て言え (スコア:3, 興味深い)
定員満たすために、学力の足切りを緩めなきゃならない学校が多すぎじゃないのか?
「定員割れしたら、研究業績で学生の注目を惹け」くらいの叱咤があってもいいと思う。
マジでイケてる業績の大学には、学生は寄ってくるんだから。そこに、才能のある奴が集まればいい。
fj.jokes出身:
イイこと思いついた (Re:寝言は寝て言え) (スコア:1)
定員割れしたら、文科省の役人を入学させて再教育すればいいんじゃね?
ついでに、政治家も毎年テスト受けて成績が悪かったら再教育で
Re:寝言は寝て言え (スコア:1, おもしろおかしい)
Re:それより予算のロックを・・・ (スコア:1, すばらしい洞察)
ノーベル賞を取れてるのは「海外に流出した日本の頭脳」って印象です。
「今までのやり方」は流出促進に役立ってるだけのような。